「飯田産業」や「一建設」といった名前を聞いたことがありますか? これらはすべて「飯田グループホールディングス」という、日本で一番たくさんの家を建てている巨大なグループの仲間です。彼らの建てる家は、なぜ他のハウスメーカーと比べて安いのでしょうか?
その答えは、「安い材料を使っているから」という単純なものではありません。実は、家づくりのあらゆる場面で、徹底的にコスト(お金)を節約するため、他社にマネのできない5つの戦略的な手法を駆使しているからです。
年間約4万棟という圧倒的な「数」を武器に、材料費を驚くほどコストダウン。また、これまでの常識を覆す工法や、土地仕入れのノウハウにより、「いかに性能を落とすことなく安く建てるか」を追求。
それが、「飯田産業グループの家はなぜ安いのか?」に対する答えです。
もちろん、飯田産業の家は手放しにおすすめできる、というわけではありません。この記事では、飯田産業の建売住宅を買うときに注意してほしいポイントも解説しています。
この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。
圧倒的な「数」のパワーで劇的コストダウン

飯田グループホールディングスが生まれたのは2013年のこと。もともとライバル同士だった、一建設、飯田産業、東栄住宅など6つの大きな住宅会社が「合体」してできた、まさに住宅業界の最強チームといった存在です。
この「合体」の目的は、ただ会社を大きくすることではありませんでした。みんなで力を合わせることで、圧倒的な「スケールメリット(規模の大きさから生まれる有利さ)」を手に入れ、特に「初めて家を買う若い家族」向けの市場で、他の誰も真似できないような価格の家を提供することを目指したのです 。
この「合体」こそが、これから紹介する全てのコスト削減戦略のスタート地点となりました。
市場の3割を押さえる「シェア」の力

日本全国の建売住宅の年間着工戸数は136,541戸(2023年)。それに対して、飯田グループHDの年間販売戸数は45,468件です。
これは日本の建売住宅のうち、33%強が飯田グループHDの建物だったということを表します。
これだけたくさんの家を建てるからこそ、材料を売ってくれる会社に対して「こんなにたくさん買うんだから、安くしてください」と強い交渉ができるのです。市場をたくさん持っていること自体が、さらなる安さを生み出す「圧倒的な交渉力」になっています。
データ出典
統合報告書2024|IGH
建築・住宅関連統計|国土交通省 ※建築着工統計(2023・2024年)
グループ全体で「まとめ買い」
次の章で解説するように、飯田産業グループホールディングスでは、主要な木材、設備類を自社グループ内で作っています。
一方、自分たちで作らないエアコンや給湯器などの設備も、飯田産業グループはその巨大なスケールメリットを活かします。年間4万棟分という、とてつもない量の設備をグループ全体で「まとめ買い」することで、普通の会社では絶対にできないような安い値段で仕入れています 。
こういった数の力は、安さを実現する上で無視できないものです。
木材もキッチンも自分たちで作ってしまう「垂直統合」戦略

飯田産業グループホールディングスの安さの最大の秘密の一つが、この「垂直統合」という戦略です。これは、家づくりに必要なものを、他の会社から買うのではなく、できるだけ自分たちのグループ内で作ってしまうことです。
木材・柱はファーストウッド社が供給
グループ会社の「ファーストウッド」は、海外から木を輸入し、製材し、家の柱や梁(はり)などを、設計図通りに寸分の狂いなくカット(プレカット)するまでを、すべて自社工場で行っています 。
またファーストウッドは飯田産業グループが使用する木材の大半を供給。木材は自社工場で加工し、現場への発送も行います。
こういったしくみで木材を仕入れているため、途中でかかるはずの余計な費用(中間マージン)がかからなくなり、品質も自分たちでしっかり管理できるようになりました。
その他の資材も自社グループ内で供給
壁紙や床材を作る「オリエント」という内装材メーカーも自社グループの一員です。
他にも、窓を作る「IGウインドウズ」や、キッチン・お風呂をつくる「ファーストプラス」もグループ会社。このように、さまざまな材料を自社グループ内供給とすることで、コストを落としつつ、自分たちの家の規格にぴったりと合った製品を、合理的に入手できるようにしています。
ロシアにも木材関連の子会社
2021年、飯田グループホールディングスはロシアフォレストプロダクツ社の株式を75%取得して子会社化しました。
これは、日本に近接する極東ロシアの豊富な森林資源を生かし、グループがもつ高い木材加工技術を背景に、たくさんの良質な木材を安定供給することを目指したものです。
このように、世界的にサプライチェーンを構築することで、安定した品質の建築資材をより安価に入手する工夫を続けています。
安い土地をスピーディーに探し出す情報力

良い家を安く建てるには、まず「良い土地」を「安く」手に入れることが重要です。その点飯田産業グループは、全国に400以上ある営業所を情報収集の拠点としても活用しています。
それぞれの営業所が、地元の不動産会社と仲良くなることで、まだインターネットなどに出ていない「掘り出し物」の土地情報を、誰よりも早く手に入れることができます。
地元の不動産会社にとっても、飯田産業グループは「すぐに現金でたくさん買ってくれる、頼りになるお客さん」です。だから、「良い土地が出たら、まずは飯田産業に教えよう」という流れが自然にできています。
それに加えて飯田産業グループには、土地を見つけたら「その土地に何軒の家が建てられて、いくらで売れそうか、そしていくらまでなら土地を買っても利益が出るか」をすぐに計算できる能力があります。
この分析力があるからこそ、良い土地が見つかれば「すぐに現金で買います!」と即決でき、他社よりも早く押さえることができるのです。
複数棟まとめてさらにコストダウン
建売住宅では、1軒だけ家を建てる土地よりも、何軒かまとめて建てられる広い土地を一度に買うことを前提としています。
飯田産業も、通常は大きな土地をいくつかに分割して、複数棟を建築・販売しています。
現場の大工さんや設備職人さんを共有し、人件費を抑えてコストダウンをはかることもその目的のひとつです。
材料費を安くするだけでなく、納期を短縮して人件費を抑えることも、飯田産業の安さの秘密となっています。
半分工場で作り現地で組み立てる合理的工法

飯田グループホールディングスの家は、コストを抑えるために、設計の段階から工夫されています。デコボコが多い複雑な形の家は、材料にムダが出たり、建てるのに手間がかかったりします。そこで、できるだけ四角に近いシンプルな形(総二階建てなど)にすることで、コストを安くしています。
また、大工さんがノコギリやカンナを使って木を削る…という昔ながらの工法ではなく、工場で作られた部品を現場で組み立てる「プラモデル」に近いイメージで建築することも、コストダウンにつながっています。
家づくりの中心を、天候などに左右される屋外の「現場」から、管理の行き届いた「工場」へと移すことで、より建築の効率を上げて現場ごとのクオリティーのバラツキもなくしています。
地震に強い家を効率よく建てる「I.D.S.工法」
飯田産業のI.D.S.工法は、独自に開発した「木造軸組-パネル工法」という家の建て方です。
日本の伝統的な家づくり(木造軸組工法)の「設計の自由さ」と、壁で建物を支える工法(パネル工法)の「地震に対する強さ」の、両方の良いところを組み合わせたのが最大の特徴です。
自社工場で「プレカット」後、現場へ搬送
I.D.S.工法で使われる壁のパネルや、木材の切断・加工(プレカット)は、すべて自社工場で行われています。現場の職人さんの腕前に左右されにくく、精密で均一な品質の部材を安定してつくることができます。
「直営施工」でコストと品質の両方を管理
多くのハウスメーカーは、実際の工事を別の建設会社(下請け)にお願いしています。しかし飯田産業グループでは、自社の社員が現場監督として、直接工事を管理する「直営施工」という方式をとっています 。
これにより、下請け会社に支払うはずだった中間マージンを丸ごとカットできるため、コストを大幅に削減できます。また、自分たちで直接管理することで、品質のチェックもしやすくなり、何か問題が起きてもすぐに対応できます。
お金をかけずに住宅を販売する工夫

ハウスメーカーといえば、たくさんの営業担当がいて、家を買いたいお客さんに応対しているイメージですが、そこにはたくさんのムダがあります。
飯田産業グループでは、そういったムダを省き、不要なコストをかけない工夫をこらしています。
豪華なモデルハウスは作らない
家を買おうとすると、立派な住宅展示場に行くことが多いですが、モデルハウスは作るのも維持するのにもお金がかかります。飯田産業は、そうしたお金のかかる住宅展示場はほとんど持たず、代わりに、実際に分譲地で販売している家そのものを「モデルハウス」としてお客さんに見てもらいます。
お客さんは、リアルな家の大きさや街の雰囲気を体験できますし、会社側は莫大な広告費を節約できる、一石二鳥の作戦です。主な宣伝活動は、インターネットの物件サイトや、地域を絞った新聞折り込みチラシなどが中心です 。
およそ半分を地元の不動産会社と協力して販売
飯田産業グループの家の多くは、自社の営業マンではなく、地元の不動産仲介業者が売っています(会社によって4割~8割)。
たくさんの営業マンを社員として抱えるという固定費を、家が売れた時だけ支払う手数料(変動費)に変えることで、人件費を抑制しています。
それだけでなく、地元の市場をよく知っている不動産会社に効率よく家を売ってもらえるというメリットもあります。
売れ残りは早めに値下げして売り切る
完成したのに売れない家は、利益を圧迫する可能性があります。
そのため、売れ残っている物件は、ためらわずにどんどん値段を下げていきます 。完成して3か月も経つと「処分物件」として扱われることもあるほどです。
これは、1軒の家で最大の利益を狙うのではなく、現場全体、エリア全体のお金の流れ(回転率)をよくすることを最優先に考えているからです。
飯田産業の家にもデメリットや注意点はあります

もちろん、飯田産業の家にもデメリットはあります。
そして、飯田産業の住宅のデメリットはその最大のメリットである「低価格」を実現するための仕組みと表裏一体の関係にあります。
デザインや間取りの自由度・個性はあまりない
飯田産業の家は、主に「建売住宅」という、すでに完成しているか、完成間近の家を土地とセットで販売する形式です。そのため、注文住宅のように「壁紙はこの色にしたい」「キッチンはこのメーカーの製品を入れたい」といった購入者のこだわりを細かく反映させることは基本的にできません。
また、コストを抑え、効率的に建築するため、外観のデザインや色がある程度パターン化されています。そのため、分譲地全体で似たような見た目の家が並ぶことがあります。
間取りについても最大公約数的な物で、特別感はありません。システムキッチンやシステムバス、洗面台などの設備類については、しっかりしたメーカー製ではあるものの、標準グレード。これは同じ物を大量に仕入れてコストダウンをはかっているからです。
「オプション工事」が追加で必要になることが多い
これは注意しておきたい点ですが、標準仕様では網戸などの必要な物も揃っていません。快適に暮らすために、以下のような設備はオプションで追加する必要があります。
- 網戸
- カーテンレール
- 雨戸、シャッター
- テレビアンテナ
- 表札、ポスト
- 駐車場や庭の整備(外構工事)
- 照明器具(一部のみ標準の場合が多い)
飯田産業に限らず、建売住宅購入時にはこういったオプション工事の費用も予算に入れておく必要があります。
現場を担当する大工さんの質によっては仕上がりに難があることも
飯田産業グループでは、独自工法により大工さんの腕に左右されにくい建物をつくっています。しかしそれでも、大工さんによる当たり外れはあります。
建築業界は人手不足で、飯田産業のような忙しい現場では人手が足りない場合もあります。
そのため、まだ経験の浅い大工さんが施工を担当するケースもあり、そういった現場では仕上がりに難があることも考えられます。
この点は、クラシエステート株式会社のような建築の知識をもつ仲介不動産会社が間にはいることで、しっかりと建物の目利きをすることが可能です。
お問い合わせフォーム|クラシエステート株式会社
飯田産業グループの建売一戸建て住宅については仲介手数料無料で対応可能です。お問い合わせいただければ、無料で建物のコンディションや仕上がりのチェックに同行します。お気軽にお声がけください。
よくある質問(FAQ)と回答

この章では、本文中に書くスペースがなかった補足的な内容を、Q&A形式で掲載していきます。
飯田産業の建物の坪単価はどれくらい?
飯田産業の建売住宅の、建物部分の坪単価は、およそ40万円から60万円くらい。公式に発表しているわけではありませんが、飯田産業の注文住宅の価格水準や、建売住宅を価格査定してみた場合の坪単価から、安い場合は40万円を切っており、高いケースでは60万円を超えているとかんがえていいでしょう。
耐震性は注文住宅と比べて違う?同じ?
飯田産業の家は、国の定める一番上のランクである「耐震等級3」をすべての家でクリアしています 。これは、法律で決められた最低限の強さの1.5倍も頑丈だということです 。
災害の時に拠点となる消防署や警察署に求められるのと同じレベルの強さですから、大きな地震が来ても、家が壊れて住めなくなる可能性がとても低いという特徴があります。
ただし、地震の力に「耐える」ことに特化しており、揺れ自体を吸収する「制震(せいしん)」や、揺れを建物に伝えないようにする「免震(めんしん)」といった工法は選べません。
とはいえ、ふつうの住宅で制震構造のものはごく少数ですし、免震構造に至ってはほぼ存在しないレベル。飯田産業の家の耐震性能は、事実上トップレベルに近いといっていいでしょう。
飯田産業の家は「恥ずかしい」という話は本当?
飯田産業の家の品質は決して低いわけではなく、基本性能はしっかりしています。しかし、コストを抑えるために、どうしても画一的な「規格化」された住宅であることや、そもそもの価格の安さから「飯田産業の家なんて恥ずかしい」という人もいます。
しかし、飯田産業の家に批判的なのは、子どもがいない夫婦共働き世帯が多い傾向があります。要するに、もともとが建売住宅よりも注文住宅を購入したい層ですから、偏見に基づく意見ともいえるでしょう。
逆に、これから子どもたちにお金がかかるファミリー層にとっては、クオリティーと価格を両立している点は魅力でしょう。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ参照してみてください。
まとめ「飯田産業の安さの理由と、買うべきかどうかの判断」

飯田産業の家は、圧倒的なコストパフォーマンスという大きな魅力があります。しかしその反面、「デザインの自由度が低い」「デザイン性が高くない」というデメリットも存在します。
これらの点を十分に理解した上で、ご自身の予算やライフスタイル、家に求める優先順位と照らし合わせて検討することが、後悔しない家選びのポイントになるでしょう。
また、一軒一軒の品質に差が出にくいI.D.S.工法で施工しているものの、現場の大工さんによっては建物の品質にバラツキが出ることも……。
そこで、クラシエステート株式会社では、飯田産業の住宅については仲介手数料無料で現場同行を行います。
プロの目で建物を見て、しっかりした大工さんが作った建物かどうか判断し、施工上の欠点についても詳しくチェックしていきます。
お問い合わせフォーム|クラシエステート株式会社
もちろん、しつこい営業などは一切行いません。お気軽にお問い合わせください。