中古マンションの売り出し価格と成約価格の差は平均4%|データで見る価格乖離率

中古マンションの売り出し価格と成約価格は、同じ金額になるとは限りません。

売り出し価格は、売主が市場に提示する販売開始価格です。

それに対して成約価格は、買主との交渉を経て、実際に売買契約が成立した価格を指します。

東京カンテイの2024年下期の調査では、売り出し価格と成約価格の平均価格乖離率は、首都圏で-4.19%、近畿圏で-7.45%、中部圏で-8.59%でした。

また、この数値はあくまで地域全体の平均。駅からの距離、築年数、管理状態、眺望、周辺の競合物件などによって、実際の成約価格はさらに変動します。

相場より高く売り出せば得をするとは限りません。

価格設定が高すぎると、販売開始直後の反響を逃し、売却期間の長期化や大幅な値下げにつながる可能性があります。

この記事では、中古マンションの査定価格・売り出し価格・成約価格の違いを整理したうえで、地域別の価格乖離率、販売期間との関係、適正な売り出し価格を決める手順まで解説します。

読み終えるころには、ご自身のマンションが最終的にいくらで売れそうかを考えるための、具体的な判断基準がわかります。

立石秀彦

この記事は「東京マンション売却編集部」が作成し、以下の監修者が内容を確認しています。

立石秀彦

宅地建物取引士/JSHI公認ホームインスペクター アップライト合同会社 代表

雑誌編集者として実業之日本社に勤務後、沖縄で不動産会社(沖縄かりゆし不動産)を約10年経営。現在はアップライト合同会社の代表として、関東・関西・沖縄の不動産会社と連携し、不動産関連データ分析および宅建業を運営。

目次

中古マンション売却における3つの価格とその役割

中古マンションの売却では、3つの異なる価格が登場します。

それぞれの役割と関係性を理解することが、希望の価格で売却を成功させる第一歩です。

これら3つの価格は必ずしも一致しません。

査定価格を参考に売主が売り出し価格を決め、買主との交渉を経て最終的に成約価格が決まる、という流れを把握しておきましょう。

不動産会社が算出する査定価格

査定価格とは、不動産会社が専門的な知見に基づき「この価格なら3か月程度で売れるだろう」と算出する見込み額のことです。

宅地建物取引業法では、不動産会社が査定価格を提示する際に、その根拠を明らかにすることが義務付けられています

周辺の類似物件の取引事例や、物件の状態、市場の動向などを総合的に分析して算出される客観的な価格といえます。

査定価格は、あくまで売却活動を始める上での目安となる価格であり、売主を法的に拘束するものではありません。

売主の希望が反映される売り出し価格

売り出し価格とは、売主が自身の希望を反映させて設定し、インターネットの物件情報サイトや広告などに掲載する販売開始価格を指します。

多くの売主は、住宅ローンの残債や住み替え先の購入費用、そして買主からの値下げ交渉を想定して、査定価格に5%~10%程度上乗せした金額を売り出し価格に設定する傾向があります。

売り出し価格は売主の意思で自由に決められますが、市場相場からかけ離れた価格設定は、売れ残りの原因になるため注意が必要です。

実際の取引金額である成約価格

成約価格とは、価格交渉などを経て買主と売主が最終的に合意し、売買契約書に記載される実際に取引された金額のことです。

多くの場合、売り出し価格から買主の値引き交渉によって数%程度低い金額で成約に至ります。

例えば、4,000万円で売り出していた物件が3,850万円で売買契約を結んだ場合、成約価格は3,850万円です。

売却によって最終的に手元に入る金額は、この成約価格が基準になります。

売却計画を立てる際は、売り出し価格ではなく、成約価格がいくらになるかを予測することが重要です。

売り出し価格と成約価格の差を示す価格乖離率

売り出し価格と、実際に売買が成立した成約価格の差を「価格乖離率」と呼びます。

この数値は、ご自身のマンションが最終的にいくらで売れるのかを予測し、現実的な売却計画を立てるうえでとても参考になる指標です。

しかし、価格乖離率は全国一律ではなく、地域によって大きく異なります。

まずは、三大都市圏の最新データを見ていきましょう。

出典:東京カンテイ「中古マンションの売却価格と売り出し価格乖離率」(2024年下期)

この表が示すように、地域によって数パーセントの差があることがわかります。

ご自身のマンションがあるエリアの市場動向を把握することが、売却戦略の第一歩となるのです。

首都圏の平均価格乖離率は-4.19%

価格乖離率とは、「(成約価格-当初売り出し価格)÷当初売り出し価格×100」という式で計算される、売り出し価格から最終的にどれくらい価格が変わったかを示す割合のことです。

マイナスの場合は、値下げされて成約したことを意味します。

東京カンテイの調査によると、2024年下期に売買された首都圏の中古マンションでは、この価格乖離率の平均が-4.19%でした。

これは、例えば5,000万円で売りに出したマンションが、最終的には約210万円低い4,790万円前後で成約している計算になります。

ただし、これはあくまで多くの取引を平均した数値です。

すべての物件が同じように値下がりするわけではなく、個別の条件によって結果は変わります。

近畿圏-7.45%・中部圏-8.59%という地域による差

中古マンションの価格乖離率は、お住まいの地域によって傾向が大きく異なります

首都圏の-4.19%という数値は、あくまで首都圏の市場を反映したものです。

同じ2024年下期のデータで比較すると、近畿圏の平均価格乖離率は-7.45%、中部圏では-8.59%という結果でした。

仮に3,000万円で売り出した場合、近畿圏では約224万円、中部圏では約258万円の値引きが平均的に行われている計算になります。

このように、どのエリアで売却するかによって、売り出し価格と成約価格の差は変わってきます。

ご自身のエリアの市況を正しく理解することが、納得のいく売却につながります。

販売期間と価格乖離率の関係

売却にかかる期間も、成約価格に影響を与える要素の一つです。

一般的には、販売期間が長引くほど、価格乖離率が大きくなる傾向が見られます。

特に近畿圏と中部圏ではその関係が強く、例えば近畿圏では、1か月以内に成約した物件の価格乖離率が-2.87%であるのに対し、売却に12か月を要した物件では-14.73%まで差が拡大しています。

早く売れる物件ほど、売り出し価格に近い金額で成約しやすいといえるのです。

一方で、2024年下期の首都圏のデータでは、販売期間と価格乖離率の間に統計的に明確な相関は確認されませんでした。

これは都心部の高額物件などが平均値に影響している可能性もあり、物件の特性を個別に見極める必要があります。

物件の条件で変わるため平均値はあくまで参考

これまで見てきた平均の価格乖離率は、ご自身のマンション売却におけるひとつの目安にはなりますが、結果を保証するものではありません

実際の取引では、駅からの距離や建物の築年数、管理状態、眺望、そして周辺で販売されている競合物件の数といった、マンションが持つ固有の条件が価格を大きく左右します。

希少性が高く人気のある物件であれば、売り出し価格のままで、あるいはそれ以上の価格で成約するケースもあります。

したがって、平均データを参考にしつつも、最後はご自身のマンションの強みと弱みを客観的に評価し、売却戦略を立てることが重要です。

レインズの新規登録価格と成約価格の差は値下げ率ではない

不動産会社が利用する物件情報システム「レインズ」でも、新規登録価格と成約価格のデータが公表されています。

このデータを見る際には、新規登録された物件と成約した物件は、同一の物件ではないという点に注意が必要です。

レインズの月次データは、その月に新たに売り出された物件群の平均価格と、同じ月に売買契約が成立した別の物件群の平均価格を示しています。

この二つの平均価格の差は、市場全体の価格の動きを知るヒントにはなりますが、個々の物件がどれくらい値下げされたかを示す「値下げ率」とは根本的に異なります

長期間売れ残っている高値の物件は成約データに含まれないため、レインズの価格差だけを見て「平均でこれくらい値引きされる」と判断するのは、実態と異なる結論を導く可能性があります。

相場より高い売り出し価格がもたらすリスク

高く売りたいという気持ちは大切ですが、相場からかけ離れた価格設定は売却の長期化や最終的な手取り額の減少につながります。

特に注意すべきは、売却活動が始まった直後に、多くの購入検討者の目に触れる機会を失ってしまうことです。

チャレンジ価格が成功するケースもゼロではありませんが、多くの場合でデメリットが上回る結果となります。

販売開始直後の反響を逃す可能性

購入を希望する人は、不動産ポータルサイトで「価格」や「エリア」といった条件で物件を探します。

相場より高すぎる価格は、この検索条件から外れてしまうため、そもそも物件情報を見てもらう機会を失うのです。

中古マンションの売却では、販売開始から最初の1か月間に最も多くの問い合わせや内見が集まる傾向があります。

この大切な時期に反響が得られないと、後から関心を取り戻すのは難しくなります。

売れ残り物件という印象による悪影響

売れ残り物件とは、市場に長期間掲載されている物件のことです。

相場より高い価格で売り出すと、なかなか買い手が見つからず、この「売れ残り」というネガティブな印象がついてしまいます。

ポータルサイトへの掲載期間が3か月を超えてくると、「何か問題がある物件なのでは」「人気がないから売れないのだろう」と購入検討者から敬遠されやすくなります。

一度ついてしまったマイナスの印象を払拭するのは簡単ではなく、価格を下げても注目を集めるのが困難になる場合があるのです。

最終的な値下げ幅が大きくなるケース

販売が長期化すると、売主の焦りから価格を下げざるを得なくなります。

最初の反響を逃し、売れ残り感が出てしまった物件は、相場と同じ水準まで値下げしても買い手がつかない状況に陥ることがあります。

その結果、相場よりもさらに安い価格まで下げなければ売れない状況に追い込まれることも少なくありません。

高く売るための挑戦が、かえって相場より安い金額での売却につながってしまうのです。

適正な売り出し価格で売却を成功させるための手順

中古マンションの売り出し価格は、平均データだけを参考にするのではなく、個別の物件を取り巻く状況に合わせて決める必要があります。

客観的な根拠に基づいて段階的に価格を決めていくことが、売却成功の鍵を握ります。

4つの手順を踏むことで、根拠に基づいた納得感のある価格設定が可能となり、スムーズな売却へとつながります。

同じマンションや近隣物件の成約事例の調査

成約事例とは、実際に売買が成立した価格の記録です。

広告に掲載されている売り出し価格ではなく、市場で買主が実際に支払った金額であるため、最も信頼性の高い相場の指標となります。

国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」などを活用すれば、個人でも過去の取引情報を調べられます。

少なくとも直近1年間の類似物件の成約事例を3件以上集めて、ご自身のマンションのおおよMその市場価値を把握しましょう。

成約事例を調べることで、売り出し価格を決める際の客観的な基準を持つことができます。

販売中の競合物件の価格や条件との比較

競合物件とは、購入検討者が自物件と比較する可能性のある、周辺で販売中の物件を指します。

競合物件の価格や条件を分析することで、ご自身のマンションの市場における立ち位置が明確になります。

ポータルサイトで、エリア、駅からの距離、築年数、広さなどが近い物件を検索してみましょう。

価格だけでなく、室内状況やリフォームの有無、管理費・修繕積立金の額まで比較することで、自物件の強みと弱みを客観的に評価できます。

競合物件の価格設定を参考に、購入検討者にとって魅力的に映る価格を検討します。

売却期限から逆算した価格戦略の立案

売却期限とは、「いつまでに売却を完了させたいか」という時間的な制約のことです。

住み替え先の入居時期や、資金が必要になるタイミングから逆算して、価格戦略を立てる必要があります。

例えば、3か月以内に現金化したい場合は、相場に合わせた価格設定で早期成約を目指す必要があります。

一方で、半年以上の期間を確保できるのであれば、少し高めの価格からスタートし、市場の反応を見ながら調整していく余裕が生まれます。

売却活動を始める前に価格を見直す時期や条件を決めておくと、計画的に販売を進められます。

査定額の高さではなく査定根拠の明確さで不動産会社を選択

査定根拠とは、不動産会社が「なぜその査定額を算出したのか」を説明するための客観的なデータや分析内容を指します。

提示された査定額の高さだけで不動産会社を選ぶのは避けるべきです。

媒介契約を結ぶために、意図的に相場より高い査定額を提示する会社も存在します。

大切なのは、どのようなデータに基づいて査定し、どのような販売戦略でその価格での売却を目指すのかを具体的に説明してくれるかどうかです。

査定額の背景にある根拠を丁寧に説明し、売主と一緒になって売却プランを考えてくれる不動産会社を選ぶことが、適正価格での売却成功につながります。

よくある質問(FAQ)

マンションの査定価格、売出価格、成約価格、どれが本当の価値ですか?

それぞれ役割が異なるため、どれか一つだけが本当の価値というわけではありません。

成約価格が実際に取引された金額ですが、それを知るためには、まず専門家の意見である査定価格を参考にします。

次に、ご自身の希望や値下げ交渉分を考慮して売出価格を決め、最終的に買主と合意した成約価格で売却が成立するという流れになります。

売り出し価格と成約価格の差が平均4%なら、最初から4%高く売り出せば損しませんか?

そのお考えは一見合理的に思えますが、注意が必要です。

中古マンションの売り出し価格と成約価格の差は、立地や物件の状態で大きく変わるため、すべての物件に平均値が当てはまるわけではありません。

相場からかけ離れた高い価格で売り出すと、購入希望者の検索条件から外れてしまい、内見の機会を逃す原因になります。

結果として販売期間が長引き、最終的に平均以上の値下げをしないと売れない状況になる可能性があります。

マンションの売却期間がどのくらい長引くと、価格乖離率が大きくなりますか?

一般的に、販売開始から3か月を超えても売れない場合、購入希望者から「売れ残り物件」という印象を持たれやすくなります。

東京カンテイの調査によると、特に近畿圏や中部圏では、中古マンションの売却期間が長引くほど価格乖離率が拡大する傾向が強いです。

早く売却できた物件ほど、売り出し価格に近い金額で成約しています。

売り出し中のマンションの値下げを検討するタイミングはいつですか?

値下げを検討する最初の目安は、販売開始から1か月が経過した時点です。

中古マンションは売り出し直後に最も注目が集まるため、この時期に問い合わせや内見の申し込みがほとんどない場合は、価格設定が相場より高い可能性があります。

不動産会社と相談し、競合物件の状況や市場の反応を見ながら、計画的に価格を見直すことが重要です。

レインズの新規登録価格と成約価格の差は、実際の値下げ率とは違うのですか?

はい、異なります。

不動産会社が利用するレインズのデータは、その月に「新たに売り出された物件」の平均価格と、同じ月に「売買契約が成立した別の物件」の平均価格を比較したものです。

個別の物件がいくらで売り出され、最終的にいくらで成約したかを追跡した数値ではないため、個々の物件の値下げ率を直接示すものではありません。

複数の不動産会社から査定を取り、一番高い価格を売り出し価格にするのは良い方法ですか?

必ずしも良い方法とはいえません。

不動産会社の中には、媒介契約を結びたいという目的で、意図的に相場より高い査定額を提示するところもあります。

最も重要なのは査定額の高さではなく、その金額を算出した「査定根拠」です。

近隣の成約事例や競合物件の分析に基づき、具体的な販売戦略を説明してくれる、信頼できる不動産会社を選ぶことが売却成功の鍵となります。

まとめ「中古マンションを適正価格で売却するために」

中古マンションの売り出し価格と成約価格には差があり、首都圏の平均価格乖離率はマイナス4.19%です。とはいえ、この平均値を一律に当てはめて、最初から高く売り出せばよいわけではありません。

実際の成約価格は、立地や築年数、管理状態、眺望、競合物件などによって変わります。相場より高すぎる価格は、販売開始直後の反響を逃し、売却期間の長期化や大幅な値下げにつながることもあります。

大切なのは、近隣の成約事例と販売中の競合物件を比較し、売却期限も踏まえて価格を決めることです。不動産会社を選ぶ際も、査定額の高さではなく、査定根拠と販売戦略を確認しましょう。これにより、売り出し価格に振り回されず、現実的な成約価格を見据えた売却計画を立てやすくなります。

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    この記事を書いた人

    クラシエステート株式会社とアップライト合同会社が運営する「東京マンション売却」の編集部です。データに基づいた分析を、わかりやすい記事にまとめています。

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