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地盤調査は必要? 「自分でできる」簡易チェックの5ステップ+地盤改良の基礎知識

最近は「地震に強い○○工法!」といった広告コピーがあふれています。そこで、こんな家だと、安心して暮らせるのかな……と思ってしまいがちです。

しかし丈夫な家を建てても、その土台となる「地盤」が弱ければ、地震のときに大きな被害を受ける可能性があります。

地盤は家の重さを支えるだけでなく、地震の揺れを建物に伝える役割も果たします。地盤が軟弱だと揺れが大きくなったり、液状化や地盤沈下が起こったりして、最悪の場合は家が倒壊してしまうこともあります。

つまり、本当に安全な家を建てるには、建物の構造だけでなく、その土地の地盤改良が必要か、不要なのかを知ることが重要なのです。

この記事では、専門家が使う科学的な評価方法の知識から、私たちが自分でできる簡易的なチェック方法まで、地盤の安全性を見極めるための知識をご紹介します。

土地選びや住宅購入の前に、ぜひチェックしておいてください。

この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。

第1部:地盤改良が必要かどうか、専門家はどのように調べる?

地盤の硬さや締まり具合を表す数字に「N値」というものがあります。この数値が高いほど地盤が硬く、建物をしっかりと支えられることを意味します。

N値を調べる方法は主に2つあります。

方法1:ボーリング調査(標準貫入試験)

これは最も正確な方法です。地面にボーリングマシンで穴を掘り、63.5kgの重りを76cmの高さから落として、鉄の筒を30cm地中に打ち込むのに何回叩く必要があるかを測ります。

例えば、30cm打ち込むのに5回叩けばN値は5、50回叩いても30cm入らなければ「N値50以上」となります。

この方法の良いところは、正確な数値が得られることと、地中の土を実際に取り出して詳しく調べられることです。ただし、大きな機械が必要で費用も高く(数十万円以上)、時間もかかります。

方法2:SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)

戸建て住宅でよく使われる、比較的簡単で安価な方法です。費用は8~10万円程度で、数時間で完了します。

以前はスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれていたもので、2020年のJIS規格変更にともなって名称がSWS試験にかわりました。

先端がねじ状になった鉄の棒におもりをつけて地中に押し込み、ロッドがどれくらい土の中に貫入するかを調べます。

しかしSWS試験で直接N値を測定することはできず、土質に応じた計算式に代入して、N値に相当する値を求めます。

N値でわかる地盤の状態

N値の数字から、その土地に家を建てても大丈夫かどうかがわかります。住宅メーカーから地盤調査のデータをもらうことも多いので、その時は以下の表を参照してください。

N値地盤の状態家を建てる場合の影響
0~4とても軟らかい家の重さを支えられず、沈下の危険が高い。地盤改良工事が必要
4~10やや軟らかい小さな家でも沈下の心配がある。地盤改良が必要かどうか専門家に相談
10~30良好一般的な住宅なら安心して建てられる。できればN値20以上が理想
30~50とても良好マンションなどの重い建物でも大丈夫な強固な地盤
50以上非常に強固大型建造物の建築に耐えられる地盤

一般的に、木造住宅の場合はN値5以上が目安とされていますが、より安全を考えるなら10以上、できれば20以上が理想的です。

土の種類による違いも重要

同じN値でも、土の種類によって地震時の危険性が変わります。ここでは、住宅建築でよく遭遇する4つの土質について、それぞれの特徴と注意点をわかりやすく解説します。

粘性土(粘土質の土)

粘性土は、粒子がとても細かく、水分を多く含んでいる土のことです。触ってみると、ねっとりとした感触があります。

自然の地層として長い年月をかけて形成された粘土は、実は硬くて丈夫な性質を持っています。しかし、人工的に埋め立てられた粘土は軟らかく、建物を支える力が弱いという特徴があります。

粘性土で特に注意したいのが「圧密沈下」という現象です。これは、建物の重さによって土がゆっくりと圧縮され、建物全体が少しずつ沈んでいく現象のことです。沈下のスピードは緩やかですが、長期間にわたって続くため、建物に悪影響を与える可能性があります。

谷を埋めた盛土や埋立地では、このような粘性土が見つかることが多いため、地盤調査の結果には特に注意が必要です。

砂質土(砂の土)

砂質土は、粒子が粗く、水はけの良い土です。粘性土と比べて水分が少なく、さらさらとした手触りが特徴的です。

砂質土の大きなメリットは、沈下が起こりにくいことです。粒子同士の隙間が大きいため、水が素早く抜けて地盤が安定しやすいためです。

ただし、砂質土には「液状化」というリスクがあります。液状化とは、地震の揺れによって地盤が液体のような状態になってしまう現象のことです。液状化が発生すると、それまで固かった地盤が急に支える力を失い、建物が沈んだり傾いたりする危険があります。

川の近くや海を埋め立てた土地では砂質土による液状化のリスクが高くなるため、十分な対策が必要です。

砂礫層(砂と小石が混じった土)

砂礫層は、砂と小石(礫)が混じり合った土のことです。様々な大きさの粒子がバランス良く組み合わさることで、非常に締まった状態になっています。

この土質は住宅の基礎にとって理想的な条件を備えています。粒子同士がしっかりと噛み合っているため地盤が安定しており、液状化のリスクも低いという特徴があります。

地盤調査で砂礫層が確認できれば、基礎工事において特別な地盤改良を行わなくても、安全な住宅を建築できる可能性が高くなります。

腐植土(有機質の土)

腐植土は、昔の湿地や水田などで植物が長い時間をかけて腐敗してできた黒っぽい土です。有機物を多く含んでいるため、見た目でも他の土質と区別することができます。

この土質の最大の特徴は、スポンジのような柔らかさです。水分を多く含み、圧縮されやすいため、建物の重さに耐えられないことがあります。そのため、腐植土は建物の基礎には適さない土質とされています。

もし地盤調査で腐植土が発見された場合は、地盤改良工事が必要になります。

第2部:自分でできる地盤チェック5つのステップ

専門的な調査は費用がかかりますが、自分でもある程度は土地の状態を調べることができます。以下の5つのステップで、土地の安全性をチェックしてみましょう。

ただし、ここで紹介するのは簡易的な方法なので、最終的な購入の判断をする場合は専門家の意見を聞くようにしてください。

ステップ1:インターネットで情報を集める

まずは、国や自治体が公開している災害リスク情報を調べましょう。

ハザードマップの活用

「ハザードマップポータルサイト」は国土交通省が運営する無料のサービスです。住所を入力すると、その場所の災害リスクが地図上で確認できます。

  1. 「ハザードマップポータルサイト」にアクセス
  2. 調べたい住所を入力
  3. 「土地の特徴・成り立ち」から「地形分類」を選択
  4. 「洪水・土砂災害・高潮・津波」から「液状化リスク」を選択
  5. 色分けされた地図でリスクの高さを確認

また、調べたい土地が所在する市区町村が作成している、詳細なハザードマップも確認しましょう。「(市町村名) ハザードマップ」で検索すると見つかります。

ハザードマップポータルサイトには、自治体のハザードマップへのリンクも掲載されています。

ステップ2:その土地に昔何があったかを調べる

その土地が昔、どのように使われていたかを調べることで、地盤の状態を推測できます。

筆者は、国土地理院の「地理院地図」で昔の航空写真を見るか、「今昔マップ on the web」を利用しています。

古い地図や航空写真を見る

  • 国土地理院の「地理院地図」:明治時代の地図と現在の地図を比較できます
  • 「今昔マップ on the web」:新旧の地図を並べて比較できます
  • 図書館や郷土資料館:古い地図や写真が保存されています
  • 昔、水田や沼、川だった場所は地盤が弱い可能性が高い
  • 海や池を埋め立てた土地も要注意
  • 長い間、同じ用途で使われていた土地は比較的安全

その他のおすすめサイトや、より詳しい調査手順は筆者のブログに掲載した、以下の記事で解説しています。

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法務局での登記調査

土地の登記記録を見ると、過去の地目(土地の用途)がわかります。「田」「畑」「沼」から「宅地」に変わった記録があれば、もともと農地や湿地だったことがわかります。

ステップ3:地形から判断する

土地がどのような地形にあるかで、地盤の強さをある程度予測できます。

台地や丘陵地のように、周囲より高く、平らな土地は比較的安全。古い地層でできている事が多く、地盤が安定している傾向があります。

  • 低地:川の氾濫でできた土地。新しい地層で地盤が軟らかい
  • 三角州:川が海に流れ込む場所。非常に軟らかく、液状化リスクが高い
  • 埋立地:海や沼を人工的に埋めた土地。適切に工事されていないと危険
  • 盛土:谷や窪地を土で埋めた場所。締め固めが不十分だと不安定

ステップ4:地名に注目する

昔の人々は、その土地の特徴を表す地名をつけていました。そこで、地名から土地の性質を推測することができます。

漢字の種類具体例意味
水に関する漢字池、沼、沢、浜、江、瀬、川、橋昔、水辺だった可能性
低い土地を表す漢字谷、窪、下、溝、入、堀周囲より低い土地
湿地の植物芦、葦、蒲、蓮、柳昔、湿地だった可能性
開発関連新田、新開新しく開発された土地

ステップ5:実際に現地を見る(建物がある場合)

最後に、土地や建物を実際に見て、地盤沈下の兆候がないかチェックしましょう。筆者は、不同沈下した建物を何度も見てきましたが、外見からすでに違和感を感じることも多々ありました。

そこで建物がある場合、まずは外見をしっかりとチェックしてください。

  • 基礎のひび割れ:幅0.3mm以上のひび割れは要注意
  • 外壁のひび割れ:特に窓やドアの角から斜めに入るひび割れ
  • 家と地面の隙間:基礎の周りに隙間ができていないか
  • 周辺の構造物:電柱や塀が傾いていないか

まず、上記のようなポイントをチェックしておき、違和感があれば室内で同じか所を内側から確認してください。

  • ドアや窓:スムーズに開閉できるか、鍵がかかりにくくないか
  • 壁や天井:壁紙にひび割れやシワ、はがれがないか
  • 床の傾き:ビー玉を置いて転がらないか、歩いて違和感がないか

第3部:「地盤改良が必要かどうか」の判断に進む

最後に、ここまでで集めた情報を元に、地盤改良が必要かどうかの切り分けをしていきます。

具体的なチェックポイントを見てみましょう。

  • N値が10以上で良好
  • 地形は台地や丘陵地
  • 地名にリスクのある漢字がない
  • ハザードマップでリスクの表示がない
  • 建物に異常がない
  • N値が4未満
  • 地形が三角州や低地
  • 昔の地名に「沼」や「田」がついていた
  • ハザードマップで液状化リスクが「高い」
  • 建物にひび割れがある
  • 表面のN値は良好だが、ハザードマップでは液状化リスクが「高い」
  • 昔は埋立地だったことがわかった

このような場合は、表面だけでなく、地中深くの状態も調べる必要があります。

専門家に相談すべきタイミング

以下のような「危険信号」があったら、はやめに専門家に相談したほうがいいでしょう。

  • 建物に大きなひび割れがある
  • 土地が昔、沼や水田だった
  • ハザードマップで液状化リスクが「高い」
  • 盛土と切土の境界にある
  • 近所で地盤沈下の被害が出ている

地盤改良が必要な場合は?

地盤が弱いと診断されても、すぐに諦める必要はありません。現在は様々な地盤改良技術があるからです。

  • 表層改良:浅い部分の土にセメントを混ぜて固める
  • 柱状改良:深い部分まで柱状に土を固める
  • 杭工事:硬い地盤まで杭を打ち込む

地盤改良が可能とはいえ、費用は数十万円から数百万円程度かかります。そこで、地盤改良費用も含めて土地の購入を検討する必要があります。

まとめ:安心して暮らすために地盤についても確認を

私たちが土地を購入するにあたっては、建物をしっかりと支えることができ、地震に強い地盤かどうかを判断する必要があります。そのためには、ひとつの情報だけでなく、様々な角度から総合的に判断することが重要です。

この記事で紹介した方法を使って、まずは自分で情報を集め、必要に応じて専門家に相談する…という2ステップでの対策が合理的です。

そうすることで、不動産業者や建築会社の説明を鵜呑みにするのではなく、自分で地盤改良の必要性を判断し、その土地を買うべきかどうかを決めることができます。

自分自身でしっかりと調べることと、専門家の意見を聞くこと。この両方を組み合わせることで、本当に安全な土地を選び、安心できる家が手に入ります。

もし住宅選びや土地選びに不安がある場合、東京の多摩地区であれば、クラシエステート株式会社までご相談ください。

長年にわたって新築住宅を見続けてきた私たちが、「この土地を買うべきか」「この家を買うべきか」を判断するお手伝いをいたします。

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