台風25号の大雨で、千葉県の酒々井町(しすいまち)などで「盛土(もりど)」の危険性が話題になっています(盛土とは、土を盛って高くした地盤のことです)。
千葉県内では、建設残土などを積んだ盛土が少なくとも5か所で崩れ、5か所とも行政が事前に危険性を把握していたと報じられました。
実は、インターネット上で危険な盛土を探せるケースもありますし、一方でネットの情報には出てこない盛土もあります。
そこで、この記事では「土地を買う前に危ない盛土を見分ける方法」を解説します。ネットの地図でできること、現地で見るポイント、買う前に聞いておくことを、順にひも解いていきましょう。
※本稿は10月5日時点の情報に基づいています。報道が続いているため、数字は変わる場合があります。
この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。
千葉県酒々井町で崩壊したのは「残土」の盛土

台風の後、酒々井町の開運団地(かいうんだんち)周辺では長く浸水が続きました。国土交通省関東地方整備局の10月4日付の発表によると、原因は盛土の崩落です。崩れた土砂で馬橋川(まばしがわ)がふさがれ、水の逃げ場がなくなったことによるものです。
報道によると、馬橋川沿いには2001年ごろから建設業者らが残土を捨て続け、高いところで20〜30mくらいの盛土があったとされています。
下流側の盛土についても、経緯が報じられています。2016年9月から翌年1月に事業者が大量の土を積み、その後の大雨で複数回崩れました。町は撤去を求めて指導しましたが対応されず、今年2月に行政代執行(行政が代わりに撤去すること)に着手していました。
日本テレビの取材では、被害のあった4か所について、次の点が明らかになっています。
酒々井町を含む2か所の盛土は、盛土規制法ができる前に積まれ、行政が危険性を指摘していた場所でした。袖ケ浦市の1か所は、法律ができたあとに許可なく積まれたものでした。
盛土が崩れた原因について、専門家は土を固める作業(締め固め)が不十分だった可能性を指摘しています。ただ、原因は確定していません。
ここで押さえたいのは、崩れたのが「宅地として造成された盛土」ではなく、「残土を積み上げた盛土」だったことです。
この違いは、押さえておいたほうがいいでしょう。
実は「盛土」は4タイプに分けられる
国の既存盛土の調査では、盛土を形で3つに分けています。谷の凹みを埋めた「谷埋め型」、急斜面に造成した高さ5m以上の「腹付け型」、平坦な土地に造成した「平地盛土」です。

このうち大規模なものを「大規模盛土造成地」と呼びます。谷埋め型は盛土の面積が3,000㎡以上、腹付け型は盛土前の地盤が20度以上で、盛土の高さが5m以上です。
以上は宅地等造成のための、いわばきちんと計画された盛土です。
実はそうではない、もう1つの類型が、今回問題となった「残土を積み上げた盛土」です(酒々井町のケース)。
国の区分は形態によって分類していますが、実際の危険性には「誰が、何のために積んだか」も影響してきます。
- 造成地の盛土:宅地にするために造成した盛土
- 残土の盛土:工事で出た土を積んだ盛土(土捨て場のようなもの)
このような違法性が疑われる残土捨て場としての盛土は、とくに注意が必要です。ただ、それ以外にも危険な盛土は指摘されており、計画的に盛土された場合でも、安全とは限りません。その点を、次の章で見ておきましょう。
危ないのは水が集まる盛土
危険な盛土のタイプ(分類)も覚えておいて損はないですが、現場ではそれ以上に「どんな状態か」に注目して観察します。
国のガイドラインでは、危険な盛土のサインとして次のような状態をあげています。
・のり面(盛土の斜面)からの湧き水
・擁壁(土留めの壁)の水抜き穴から出続ける水
・のり尻の排水設備の水没
・上流からの水の流れ込み
その他、崩れや変形、すそのふくらみ(はらみ出し)も、安定性を損なう変状とされています。
谷埋め型の盛土は、水が入りやすい(溜まりやすい)のが弱点です。もともとが谷や沢だったため、そもそも水が集中する地形だった可能性があります。そのため、盛土の中に水が入り込みやすいとされています。側面に谷の斜面が残ることも多く、そこから水流が集まる可能性もあります。
熱海の土石流(2021年7月)がその典型例でした。死者は28人(災害関連死1人を含む)、崩壊の起点付近に5万4千㎥以上の人工的な盛土があり、流出した土砂のほとんどが盛土された土砂だったとみられています。この災害を受けて、盛土規制法が2023年5月26日に施行されました。
国は、調査の優先度が高い盛土として、真下に住宅などがある谷埋め盛土と、盛土が高く周りの地盤が急な腹付け盛土を挙げています。
ただし、注意点もあります。
大規模盛土造成地に当たるからといって、すぐ危険という意味ではありません。国土数値情報のデータにも、直ちに危険な盛土造成地を示したものではないと明記されています。適切に造成され、排水と擁壁が管理されている盛土の土地も、一般的には数多くあります。
そのため、土地購入時に一律に盛土された土地を排除してしまうと、優良な土地を見逃す結果につながる場合もあります。
インターネットで調べる方法と限界

自分で調べる場合は、次の3つのサイト・資料が使いやすいと思います。
1. 重ねるハザードマップ(国土交通省・国土地理院)
重ねるハザードマップにアクセスしたら、まず最初に、 調査したいエリアの住所を入れて検索します。
そこで「すべての情報から選択」→「土地の特徴・成り立ち」→「大規模盛土造成地」の順に選ぶと情報が表示されます。谷埋め型は緑、腹付け型は紫で表示されます(凡例から確認できます)。全国で51,306カ所が掲載されています。
重ねるハザードマップ(国土地理院)
2. 自治体の公表資料
東京都の既存盛土等分布マップは、「大規模盛土造成地」と「その他既存盛土等」に分けて盛土のか所を表示しています。大阪府や酒々井町など、さまざまな自治体で、盛土の分布図を公開しています。
3. 古い地図・年代別の写真等の資料を活用する
地理院地図の年代別写真や、今昔マップ(古い地形図を重ねるサイト)で「昔、その場所に何があったか」を確認する事も役に立ちます。
昔その土地に何があったかを調べる5つの方法(アップライト合同会社)
昔の谷や沢が、今は平らになっていないかを見ます。国の既存盛土調査でも、過去と現在の地形や土地利用を比べて盛土の位置を把握しています。
ここでは、とくに使い勝手のよい今昔マップon the webを紹介しておきます。

- まず、今昔マップにアクセスしたら、データセットを選びます。ここでは「広島」を選びました。
- 次に左メニューから、さまざまな年代の古い地図を選びます。すると、現代の地図(右側の地理院地図)と比較できるように表示されます。
このデータを見ておくと、昔どのような地形だったのか、昔その土地に何があったのかを確認する事ができます。
今昔マップではその他にもさまざまな情報を得る事ができるため、ブックマークしておいてもよいと思います。
盛土した土地をネットだけで調査する限界
ただし、ネット上の情報だけでは調査に限界があります。たとえば、以下のような点は、ネット調査の弱点といえるでしょう。
- 国土交通省などの大規模盛土造成地は、農地や森林など、宅地として使われていない土地を原則として含みません。したがって、酒々井町等で問題となった「残土の山」は、載らない可能性があります。
- 筆者が国交省の位置図をもとに概略で確認したところ、酒々井町の崩落箇所の付近に、大規模盛土造成地の表示は出ませんでした(2026年10月5日確認)。理由までは確認できていませんが、すべての盛土を確認できるわけではないことは確かです。
- 公表の基準は自治体ごとに違います。東京都は丘陵地で500㎡以上の谷埋め盛土なども対象にしていますが、千葉市は3,000㎡以上が目安です。こういった違いも調査の限界になり得ます。
つまり、ネット上の国土交通省や自治体の情報に載っていなくても、安全とは限りません。そこで、現地調査も重要となってきます。
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現地では擁壁と周りを見る
ネット上の情報で確認できない盛土は、現地で目視による調査を行います。では、どういった点に気をつければよいでしょうか?
東京都都市整備局が、宅地の場合の点検ポイントを公開しています。
- 擁壁の長い区間に、ハラミ出しや水平方向のひび割れがある
- 擁壁がいつも濡れている。コケが生えている(水がしみ出しているサインです)
- 道路や側溝を含めて、変状が続いている
- 盛土の範囲が分かる場合、上端と下端の擁壁に変状や湧き水がある
敷地周辺であれば、こういった点を確認すると安全性が推測できます。しかし、酒々井町のように、上流の残土の盛土が被害を広げるケースもあります。
ここからは今回の災害を踏まえた筆者の視点になりますが、以下のようなポイントを見ておくとよいでしょう。
- 上流側の谷筋に、土を積んだ山がないか
- 排水路や側溝が、土やゴミで詰まっていないか
- 現場に許可の標識があるか(許可を受けた盛土等は、現地に標識を掲げる決まりです)
- 雨のあとに、もう一度見に行ってみて、変わった点はないか
よくいわれることですが、地名に「沢」や「池」など水を連想する漢字が入っている場合は、さらによく注意したほうがよいでしょう。昔その場所に水源があり低湿地だった可能性もあります。
標識のない大規模な土の積み上げを見つけたら、市町村役場で確認しておくといいでしょう。自治体が何か情報を持っている可能性もあります。
なお、目視で分かる情報だけでは、確実な判断はできません。危険かどうかの最終判定には、専門家の調査も必要です。
土地や家を買う前に確認すること

重要事項説明(重説)では、物件が造成宅地防災区域内かどうかの説明義務があります。盛土規制法に基づく制限の内容も、宅建業法上、説明しないといけない項目です。
ここは重説を受けるときに、しっかり確認しておいたほうがいいでしょう。
ただ、東京都はほぼ全域が規制区域で、千葉県も全域が規制区域です。区域の内外だけでは、盛土の状態は分かると言い切れませんので、さらに不安点を突っ込んで質問しておいたほうがいいでしょう。
また、大規模盛土造成地の有無は、重説の説明義務の対象ではありません。そこで、不動産会社には、次の4点を聞いてください。
- 造成地の場合は、いつ、誰が造成した土地か
- 売買目的の敷地は盛土か、切土か
- 擁壁の種類は何か。確認済証や検査済証はあるか
- 地盤調査報告書はあるか
建物検査(ホームインスペクション)を入れてくれる不動産会社も増えていますが、ホームインスペクションは、建物が中心です。地盤や擁壁は調査対象となるケースもあるため、資料等からきっちり調査してくれる不動産会社を選んでください。
気になる土地は溝口社長が見に行きます
地図で分かることには限界があります。そのため、現地で確認するしかないこともよくあります。
とはいえ、地盤の安全性を見るには、専門知識も必要です。しかも、契約してしまってからでは、見直せません。
「詳しい人の意見が聞きたい」という場合は、クラシエステートの公式LINEに登録し、「盛土や地盤も調べて」というメッセージを送ってください。
代表の溝口が、現地を見に行きます(関東一円に対応しています)。
※現地確認は目視によるものです。盛土や地盤の安全性を保証するものではありません。判断が必要な場合は、専門家の調査をご案内します。