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【初心者向け】不動産登記簿の見方を宅建士がわかりやすく解説

不動産登記簿は、土地や建物の「履歴書」のような存在です。一見複雑に見えますが、読み方さえ分かれば、さまざまな情報を読み取ることができます。

  • 表題部 その不動産の概要
  • 権利部(甲区) その不動産の所有権がどう移り変わったか
  • 権利部(乙区) どんな制限物権(抵当権)がついているか
  • 共同担保目録 他にどんな不動産とセットになっているか

これらをじっくり読み解くと、その不動産が歩んできた歴史や現在の状況、さらには将来のリスクまで見えてきます

購入を検討している土地や建物の本当の価値を見極めるために、登記簿を正しく読み解く方法をお伝えします。

この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。

不動産登記簿とは何か?土地の「身分証明書」を理解する

不動産登記簿は、その土地や建物の「身分証明書」のような役割を果たします。人間が住民票や戸籍謄本で身分を証明するように、不動産については登記簿によって、誰が所有しているのか、どのような負担があるのかを公的に記録しています。

地番と住居表示の違いに注意

登記簿を読むうえで最初につまずくのが、「地番」と「住居表示」の違いです。これは例えるなら、同じ人物でも戸籍上の本名(地番)と仕事の都合で使っている旧姓(住居表示)のようなものです。

地番は法務局が管理する法的な番号で、すべての登記手続きに使われます。一方、住居表示は郵便配達や日常生活で使われる「住所」です。

住居表示から正確な地番を調べるには、固定資産税の納税通知書を確認するか、法務局に問い合わせるのが確実です。

もしパソコンで地番を調べる場合は、マップルの法務局地図ビューアがおすすめです。地図上で見たい土地をクリックするだけで、地番を表示してくれます。

登記簿の取り方:オンラインで効率的に入手する

法的な証明が必要な場合は法務局に足を運ぶ

登記簿はかつて法務局でしか取得できませんでした。しかし現在では、自宅からオンラインで簡単に取得できます。

最も一般的なのは「登記情報提供サービス」を利用する方法です。これは民事法務協会が運営するオンラインサービスで、現在は土日祝日でも利用できます。ただし、このサービスで取得できる登記簿は、公的な証明書としては使えません。

上記リンクからサイトにアクセスし、「一時利用」を選べば、本登録なしにその場で登記簿を取得できます。料金は全部事項証明書が331円で、PDF形式でダウンロードできます。

クレジットカードやデビットカードで決済できますが、JCBのデビットカードは利用できないので注意してください(VISAのデビットは利用可能)。

法務局窓口で取得すると公的な証明になる

公的な証明書が必要な場合は、法務局で「登記事項証明書」を取得する必要があります。この場合の料金は1通600円。

窓口で直接申請すれば10分から20分で発行されますし、オンラインで申請して郵送で受け取ることも可能です。オンライン申請なら500円と少し安くなります。

お近くの法務局を探す場合は、以下のページを参照してみてください。

目的に応じてオンラインと登記事項証明書を使い分け

登記簿の取得は、目的に応じて使い分けるのがおすすめです。

事前の調査や権利関係の確認なら登記情報提供サービスで十分ですが、不動産取引や公的な手続きには、法務局で発行される正式な証明書を用意してください。

銀行などに提出する場合は「オンラインでいいですか? 登記事項証明書が必要ですか?」と尋ねておくといいでしょう。

登記簿の見方:4つのパートに分けて解説

不動産登記簿は、4つの主要な部分から成り立っています。

4つの部分というのは、その不動産の概要を表す「表題部」と、所有権について記された「権利部(甲区)」、所有権以外の権利(抵当権など)について記された「権利部(乙区)」、そして「共同担保目録」です。

表題部を見ると不動産の概要がわかる

「表題部」は不動産の基本情報を記載した部分で、いわば「プロフィール」のようなものです。

土地の場合、所在地、地番、地目(土地の用途)、地積(面積)が記録されています。ここで注意したいのは、記載されている情報が必ずしも現在の状況と一致しない場合があることです。例えば、地目が「畑」となっていても、実際には長年駐車場として使われていることがあります。

建物の場合は、構造や床面積、新築された年月日などが記載されています。

権利部(甲区)で持ち主がどう変わったかを見る

「権利部(甲区)」は所有権の履歴を記録した部分です。ここには現在の所有者だけでなく、過去の所有者や所有権が移転した理由(売買、相続、贈与など)が時系列で記載されています。これらの記録を読むことで、その不動産がどのような経緯で現在の所有者に至ったかが分かります。

権利部(乙区)でどんな制限がついているかを見る

「権利部(乙区)」は所有権以外の権利、主に抵当権などの担保権を記録した部分です。ここにはその不動産が借金の担保になっている状況や、借金の金額、貸主の情報が記載されています。

この部分は、その不動産の「財務状況」を映し出していると考えられます。複数の抵当権が設定されている場合は、所有者が資金調達に苦労しているかもしれません。

では、具体的に不動産登記の詳しい見方を解説していきましょう。

表題部の見方:不動産の「基本スペック」は?

登記簿表題部のサンプル

表題部は不動産の基本的な物理的特徴を記載した部分です。ここに記載された情報が、その不動産の法的な「基本スペック」となる、と考えるといいでしょう。

土地の表題部でまず見ておきたいのは「地目」です。これは土地の用途を示すもので、宅地、田、畑、山林、雑種地など23種類に分類されています。

地目は税金の計算や建築許可の判断に影響する場合があり、注意が必要です。また、ここに記載された地目が必ずしも現在の利用状況と一致するとは限りません。

例えば、地目が「畑」だが実際には住宅が建っている場合、本来必要な地目変更登記が行われていない可能性があります。農地から宅地への変更には農業委員会の許可が必要で、この手続きが適切に行われていなければ、法的な問題に発展するかもしれません。

地目が「保安林」の場合、建築等が厳しく制限されている場合があるので、詳しい調査が必要になります。

「地積」(土地の面積)も重要な情報ですが、これも実際の面積と異なる場合があります。特に古い測量に基づく地積は、現代の精密な測量技術で測り直すと大きな差が生じることがあります。

この差は不動産の価値や開発計画に直接影響するため、重要な取引の際には改めて測量するのが一般的です。

権利部(甲区)の見方:所有権がどう移転したか?

権利部甲区のサンプル

権利部の甲区は、その不動産の所有権の歴史を記録した部分です。ここに記載された情報から、その不動産が歩んできた社会的・経済的な背景が見えてきます。

甲区で最も注目したいのは「原因」欄です。ここには所有権が移転した理由が記載されており、「売買」「相続」「贈与」「財産分与」などの記録から、その不動産の性格を推測できます。

例えば、長期間にわたって「相続」のみが記録されている土地は、何世代にもわたって同じ家族が所有している安定した資産だったと考えられます。一方、短期間で「売買」が繰り返されている場合は、投機的な取引の対象となっている可能性があります。

特に慎重に判断したいのは、共有名義の場合。

相続によって複数人の共有になっている場合などは、将来的に売却や建て替えを行う際に、すべての共有者の同意を得る必要があります。時間が経過するほど相続関係は複雑になり、権利関係の整理がつかず売却不能となっている土地もあります。

甲区の情報は、単なる過去の記録ではなく、将来の取引可能性を予測するための重要な手がかりになります。

権利部(乙区)の読み方:財務状況を推測する

権利部乙区のサンプル

権利部の乙区には、その不動産が負担する担保権などが記録されています。

乙区で最も一般的なのは抵当権の記録でしょう。抵当権者(お金を貸した人や機関)、債権額(借金の額)、設定された年月日などが記載されます。抵当権者の種類を見ることで、その融資の性格が推測できる場合があります。

たとえば大手銀行の抵当権は住宅ローンなどの一般的な融資だった可能性が高いですが、個人や消費者金融の抵当権は、不動産の所有者が資金的に厳しい状況で借入をした可能性を示しています。

複数の抵当権が設定されている場合は、特に注意が必要です。複数の抵当権が付着しているということは、所有者がその不動産を担保に、強引な資金調達を行っている可能性があるからです。財務的なリスクが高いかもしれません。

古い抵当権が残っている場合も要注意です。明治、大正、昭和初期の「休眠抵当権」は、債務は完済されているものの登記上は残っている状態です(実体上時効消滅しているかもしれません)。

これらは法的には問題ありませんが、売却時に必要な抹消手続きが問題になります。すでに抵当権者がいないなどの理由で、抹消手続きが難しいことがあるのです。

共同担保目録:隠れた不動産のつながりを読み解く

共同担保目録のサンプル

宅建業者の間では、登記簿を取得するときに「共同担保目録(共担目録)」付きで請求することが、なかば常識となっています。

共同担保とは、1つの融資において、複数の不動産を担保に取ること。そして、その複数の不動産の目録が「共同担保目録」です。

たとえば、建売住宅の購入のために住宅ローンを借りた場合、銀行は土地と建物の両方に抵当権を設定します。これが共同担保です。

その場合、共同担保目録付きで土地の登記簿を取ると、建物に関する簡単な情報も掲載されます。これを見ることで、建物の家屋番号を確認でき、建物部分の登記簿を取得するときに役に立ちます。

それだけではありません。

事業用資金の借入の際、手持ちの複数の不動産を担保にすることがあります。共同担保目録を取ることで、それらすべての存在を把握することができ、複雑な権利関係の存在を理解することにつながります。

一見単純に見える取引も、実際には複雑な不動産ネットワークの一部である可能性があります。投資判断や融資審査において、この隠れたネットワークを見落とすことは、予期しないリスクを招く可能性があります。共同担保目録を通じて、表面的な情報だけでは見えない深い状況を把握することができます。

歴史的背景を調査できる「閉鎖謄本」の見方

現在の登記事項証明書だけでは、その不動産の完全な歴史を知ることはできません。そこで、より古い記録を調査することで、不動産の深い歴史を調査することがあります。

最初のステップは「閉鎖登記簿」の調査です。閉鎖謄本とは1988年頃から始まったコンピュータ化や、土地の合筆、建物の滅失などによって閉鎖された古い紙ベースの登記簿です。戦後からコンピュータ化までの所有権と担保権の歴史を記載し、現行証明書では遡れない過去を知る手がかりになります。

さらに古い記録として「旧土地台帳」があります。これは近代的な登記制度の前身で、明治時代の地租改正に伴って作成された課税台帳が元になっています。この記録により、所有者と地目を明治時代(1880年代頃)まで遡って追跡することが可能です。旧土地台帳は、その土地の「出生証明書」ともいえる貴重な史料です。

「旧公図」と「附属地図」が参考になる場合もあります。こういった資料には現在は存在しない古い道路(里道)や水路が記録されており、これらは今でも法的な意味を持つ場合があります。土地の境界や形状の変遷を理解する際に役立ち、現在の土地利用計画を立てる際の重要な参考資料となります。これらの歴史的記録を層のように重ね合わせることで、その土地が辿ってきた社会的・経済的な変化の全体像を描き出すことができます。

登記簿に加えて見ておきたい3種の情報源

登記簿は確かに重要な情報源ですが、それだけで不動産の全てを理解することはできません。真実は「記録」「物理的現実」「現地調査」という3つの情報源を組み合わせることで見えてきます。

登記簿以外にもある不動産の「記録」

第一の情報源である「記録」には、登記簿以外にも公図、地積測量図、都市計画図、ハザードマップなどがあります。建物であれば建築確認時の書類も重要な記録です。

公図は法的な区画形状と隣接関係を示し、境界を確認するための基礎的な資料です。あわせて地積測量図などを活用し、土地境界を確認しておく必要があります。

また、ハザードマップは災害リスクを確認するために必要な情報が記載されています。

建築確認時の書類には、建物の図面や、前面道路との関係などが記載されています。

不動産の物理的現況調査

第二の「物理的現実」の確認には現地調査が不可欠です。境界標の有無、越境物の確認、擁壁の状態、道路の幅員など、図面だけでは分からない物理的な状況を直接確認すると、記録と現況の違いが見えてくる場合があります。

たとえば、境界標の位置が図面と違っている、といったことはよくあります。他にも、登記簿上は「宅地」でも、実際には急傾斜地で建築が困難な場合もあります。

近隣住民への聞き込み調査等

第三の「現地調査」は近隣住民への聞き込みなどで入手します。

騒音・悪臭問題、過去のトラブル、地図には載らない嫌悪施設の存在など、公的記録では分からない貴重な情報が得られることがあります。

筆者はよく「単に物件前に立っているだけ」という調査を行うことがあります。そうすると、近所の人が声を掛けてきて、意外な情報を教えてくれることがあります。

実際にその方法で以下のような事実を知ることができました。

  • 売主は黙っていたが孤独死物件で、住宅内部で腐乱死体が発見された。
  • 最近売買寸前までいったことがあり、その時合意した具体的な価格を聞けた。
  • 大潮の時排水溝から海水が逆流してくることがある(海近の物件)。

そう考えると、登記簿以外の情報もフル活用して判断することが重要だとわかります。

たとえば登記簿上は「宅地」、現地調査で擁壁の崩壊を確認、近隣住民から「近くの川が氾濫しやすい」といった情報を入手できた場合、これらを統合してはじめて「法的には宅地だが、大規模な治水・造成工事なしには建築困難」という結論が出せます。

「不動産登記簿の見方」まとめ

不動産登記簿の見方をマスターすることで、土地や建物の本当の姿を理解できるようになります。

登記簿は単なる公的記録というだけではなく、その不動産が歩んできた歴史と現在の状況、そして将来のリスクを物語る、貴重な資料なのです。

基本的な搭載事項を理解し、各部分の読み方を身につけ、さらに歴史的記録や現地調査と組み合わせることで、表面的な情報だけでは見えない真実に迫ることができます。

不動産は人生で最も大きな買い物の一つです。登記簿を正しく読み解く技術を身につけて、後悔のない不動産選びを実現してください。

もし「登記簿の読み方でわかりにくいことがある」「権利関係が複雑すぎて不安だ」という場合は、クラシエステート株式会社までご相談ください。

公式LINEを利用すれば、ニックネームでのやりとりもOK。お気軽にご質問いただけます。

付録:よくある質問

登記簿と登記事項証明書は同じものですか?

登記簿と登記事項証明書は、内容的には同じ情報を指しますが、形式が異なります。かつては紙ベースの「登記簿謄本」が使われていましたが、現在はコンピュータ化された「登記事項証明書」が主流となっています。実務上はどちらも同じ意味で使われることが多く、法務局で取得できる公式な証明書は「登記事項証明書」という名称です。オンラインの登記情報提供サービスで取得できるのは証明書ではなく、あくまで「登記情報」の閲覧データである点に注意が必要です。

 地番と住居表示が違う場合、どちらが正しいのですか?

地番と住居表示は、それぞれ異なる目的で使われる正式な番号・住所です。地番は法務局が管理する法的な識別番号で、登記や測量などの公的手続きに使用されます。住居表示は郵便配達や日常生活で使われる住所で、市区町村が管理しています。どちらも正しいものですが、登記簿を取得する際には必ず地番を使用する必要があります。地番は固定資産税納税通知書や権利証で確認できるほか、法務局に問い合わせることで正確な地番を教えてもらえます。

古い抵当権が残っていても問題ないのでしょうか?

明治、大正、昭和初期の古い抵当権(休眠抵当権)は、債務は既に完済されているか時効消滅している可能性が高く、実質的な問題はありません。しかし、登記簿上に残っている限り、不動産を売却する際には抹消手続きが必要となります。この手続きには時間と費用がかかる場合があり、特に抵当権者が既に存在しない場合は複雑な法的手続きが必要になることもあります。一方で、休眠抵当権の存在は、その不動産が長期間にわたって同じ家族に所有されていたことを示す貴重な歴史的証拠でもあります。

登記簿だけで不動産の安全性は判断できますか?

登記簿は重要な情報源ですが、それだけで不動産の安全性を完全に判断することはできません。登記簿からは法的な権利関係や所有履歴は分かりますが、物理的な状況(地盤の状態、建物の劣化度など)や周辺環境(騒音、悪臭、嫌悪施設の存在など)については直接的な情報は得られません。総合的な安全性の判断には、登記簿の分析に加えて、現地調査、近隣への聞き込み、専門家による建物診断、地盤調査などを組み合わせた多角的なアプローチが必要です。特に高額な不動産取引では、司法書士や土地家屋調査士などの専門家に相談するべきでしょう。


※本記事は2025年6月に制作し、掲載情報は2024年の法改正を含む最新の制度に基づいて作成されています。詳細な手続きについては、最寄りの法務局または専門家にご相談ください。

参考資料:

-ブログ