筆者は仲介業務を行う中で、何度か「二番手からの逆転」を経験したことがあります。
確率としては低いのですが、できる限りの手を打ち、売主の心理を考えた対策を心掛けることで、逆転の可能性はアップします。
不動産の購入においては、申し込みの先後で「一番手」「二番手」と順を付けて、細かい条件面での交渉を行い、成約に向けて手続きを進めていきます。
「二番手」が存在するのは、「一番手」が絶対に物件を購入できるわけではないからです。
そこでこの記事では、どんな場合に一番手の契約が流れるのか、どんな交渉内容が売主の心に刺さるのかといった観点から、二番手でも物件を購入するテクニックを解説していきます。
この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。
二番手から逆転するために「知っておくべき事」

二番手から逆転し「狙った物件をどうしても購入したい!」という場合、知っておくべきポイントがあります。
まず最初に、不動産売買の重要な仕組みを押さえておきましょう!
ここで紹介する基礎知識を知らずに交渉すると、本来なら買えたかもしれない物件を取り逃してしまうことにつながりかねません。
また他の物件を購入する場合にも、ぜひ知っておきたいポイントなので、まず最初にこの章の内容を押さえておいてください。
誰に売るかを決めるのは「売主だけ」
不動産の購入で、自分が二番手の場合誰に対して交渉をすべきでしょうか? まずは、ターゲットを明確にしておきましょう。
不動産の売却において「誰に売るか」を決める権限があるのは売主だけです。
この点を見誤って、不動産会社に対して熱心に交渉する人がいます。しかし、それではターゲットを取り違えています。
不動産会社は味方につけるべきですが、最終的には売主に「一番手ではなく、二番手の人に売ろう」という判断を下してもらいたいわけです。
そこで「売主に対してどのように説得をすべきか」を考えるのが二番手から逆転するための最大のポイントといえるでしょう。
売主が優先する3大条件とは?
前の章で「誰に売るかを判断するのは売主だけだ」という話をしました。つまり二番手から逆転するためには、売主を攻略する必要があります。
そこでまず「売主が何を重視しているのか」を確認しておきましょう。
売主が重視する3つのポイントを押さえた上で、そのポイントごとに攻略の方法を考えるのがベストプラクティスといえます。
条件1:高く売る(買いた叩かれたくない)
売主は価格面において「できれば高く売りたい」と考えています。逆に言えば買いたたかれることが最も避けたいポイントです。
そこで不動産の価値を正当に評価し、なるべく高い価格を提示することで、売主が「この人になら売りたい」と思ってくれるチャンスが広がります。
もちろん実際には、高い金額を提示する事はかんたんではありません。
しかし不動産購入において、一番手が指し値をしている時に、満額で申し込んだ二番手が逆転するというのは、普通にあり得る事です。
値段の高さはインパクトのある交渉条件になるという点は「二番手からの逆転」において最重要項目のひとつです。
条件2:確実に売る(キャンセルはイヤ)
不動産取引では、残金決済が終わり、所有権移転登記が申請されるまでは常にキャンセルの危険と隣り合わせです。
詳しくはこの記事後半で説明しますが、不動産取引は様々な理由によってキャンセルされたり流れてしまうことがあります。
そこで売主はキャンセルなどされず、確実に売却を完了させたいと考えています。この点についても、自分がいかに確実性をアピールできるかという視点で戦略を考えていきましょう。
条件3:後腐れなく売りたい(揉めるのは避けたい)
不動産の取引においては、売買が完了した後に紛争に発展することが少なくありません。もちろん割合で言えばわずかですが、売買が完了した後「裁判で争う」といった事例もあります。
売主としては、売買が完了した後で揉めるのは避けたいと考えています。そこで後腐れなく売れますよ、という条件をどのように提示するかも「二番手からの逆転」において重要な戦略のひとつです。
ちなみに、売買完了後によくある紛争としては次のようなものがあげられます。
- 買主が引き渡しを受けた不動産に雨漏りやシロアリ被害、土壌汚染など契約に適合しない重大な欠陥があった場合
- 隣地との境界が不明確であったり、隣地から工作物等が越境している場合
- 給湯器や設備類等の付帯設備が売買契約書に記載された状態と異なっている場合
売主としては、こういった問題で後から文句を言われることや紛争に発展することは、ぜひ避けたいと考えています。この点についても、売主心理として、ぜひ押さえておきましょう。
売主や一番手との心理戦を制する3つのポイント

不動産の売買は要するに交渉です。
つまりディールに成功すれば二番手でも購入できるかもしれませんが、ヘタなディールをしてしまうと一番手に絶対勝てません。
ひとつ前の章で解説した「売主の心理」をうまく捉え、売主に響く交渉を行ってみてください。
復習しておきましょう。不動産の売主は①高く、②確実に、そして③後腐れなく売りたいと考えているわけです。
その売主心理に対してどのように交渉して「二番手からの逆転」を実現するのか? ディールを成功させるコツを考えていきましょう。
可能なら値段を上げてみる(好条件の提示)
一番手が売り出し価格よりも低い値段で指値をしている場合、二番手であるあなたは価格交渉せず、売り出し価格(満額)で買付証明を入れてみるという戦略がとれます。
これは「高く売りたい」という売主心理に、ストレートに訴求する方法です。
実は、筆者のお客さんで、一番手が満額で買付を入れている状態において、売り出し価格よりさらに高い値段で買付を入れたことがあります。
結論からいうとこの買付は通り、見事逆転に成功しました。ただこれは邪道といえば邪道なやり方ですから、常に売主が承諾してくれるとは限りません。
そこで、このような邪道な方法を取る場合、ただ買付証明書を入れるだけでなく「どうしてもこの物件を買いたい」という気持ちのこもった手紙を添えてみる方法をお勧めします。
売主に「お金で解決しようとしている」と思われると、場合によっては嫌われてしまう可能性があります。しかし、どうしても欲しいという気持ちを伝える手紙があると、ネガティブなイメージが和らぐので、さらに効果的です。
とはいえ、購入金額を上げるというのはなかなかできる決断ではありません。
価格アップが難しい場合は手付金をなるべく多く入れるという方法も考えられます。売主としては必ずしも得をする話ではありませんが、手付金が多いとその分取引の確実性がアップしますので、一定程度は歓迎されるはずです。
住宅ローン事前審査を終えておく(確実性をアピール)
これも確実性を示すための鉄則ですが、住宅ローンの事前審査をあらかじめ終えておき、買付証明書に「事前審査了承済み」と一言書き添えるようにしてください。
もし一番手が事前審査を完了しておらず、ローンが通るか通らないかはっきりしない状態であれば、ローンの確実性をアピールすることで「二番手からの逆転」につながる可能性が高まります。
八王子市を中心とする多摩エリアであれば、クラシエステートにご相談いただければ、最適な銀行と交渉し、事前審査を手配することも可能です。
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八王子地区や東京都の多摩エリア以外の地区では、無料で利用できるモゲチェックというサービスを利用してください。
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モゲチェックは有力なフィンテック企業である株式会社MFSが運用しており、ほぼすべてのメガバンクやネット銀行の審査を最短で完了することができます。またモゲチェックは銀行が支出する広告費で運用されているため、ユーザーは無料で利用することができる点もメリットです。
一番強いのは現金一括決済。もし資金に余裕があれば現金で買いますという内容の買付証明書を出すことで、逆転の可能性がさらにアップします。
「現状有姿でOK」という条件を出す(売主のリスク低減)
不動産会社としっかり相談をして判断をする必要がありますが、現状有姿で買い取るという内容の買付証明書を、売主に差し入れてみるという方法も考えられます。
売主は売却後に苦情を言われたり、訴訟に発展するリスクを避けたいと考えていますから、これは売主にとってかなり有利な条件といえるでしょう。
不動産会社は現状有姿売買の意味をよく理解していますから、売主側の不動産業者も、おそらく「これはいい条件ですよ」と伝えるはずです。
ただ繰り返しになりますが、本当に現状有姿でいいのかどうかという点は専門的な判断も必要になってきます。信頼できる不動産会社に状況をチェックしてもらい、「現状有姿でもいいだろう」と判断できない場合は、この作戦は危険かもしれません。
東京都の多摩エリアであれば、クラシエステートまでご相談ください。物件を調査した上で「売主にどんな条件を提示すべきか」をご提案できます。
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完全に現状有姿で買い受けるのは危険だという場合は「どの部分で譲歩して売主に有利な条件を出せばいいのか」といった、詳細な条件を切り分けていき、できる範囲内で売主に提案するのがいいでしょう。
平行してやるべき「次善の策」とは?

この記事でここまで解説してきた様々なテクニックを駆使したとしても、絶対に二番手から逆転できるという保証はありません。
というより不動産売買において二番手からの逆転は非常に難しいというのが現状です。
一番手のライバルも、できる範囲で好条件を出しているはずです。その上で逆転を狙うのは、かなり難しい作業です。
値段を上げ、条件を譲歩しすぎても、それはそれで「本当にこの物件を買うべきだったのか?」と後で後悔するかもしれません。
そこで、二番手から逆転するための手立てをできるだけ尽くしつつも、別の物件を探しておくなど、次善の策を用意しておくことをおすすめします。
いわゆるプランBを用意しておくことで、万が一狙っている物件が買えなかったとしても、最終的に満足のいくマイホームが手に入る流れを作ることができます。
できるだけ複数銀行で事前審査OKをもらう
筆者としては、できるだけ2つ以上の複数銀行で住宅ローンの事前審査を受けておき、複数のOKをもらっておくのが有利だと考えています。
その方がよりよい金利の住宅ローンを選ぶことができますし、何より売主に対して「複数銀行で事前審査OKをもらっている(確実性が高い)」というアピールができます。
また場合によっては、銀行同士でちょっとした競争に発展し、少しでも有利な金利を出そうとしてくれる可能性もゼロではありません。そういった点を考えると、複数銀行に事前審査をお願いしておくのがベストだといえるでしょう。
この点でも既に紹介したモゲチェックというサービスがおすすめです。モゲチェックを使うと複数銀行での融資可能性が分かりますし、モゲチェックを経由してそのまま事前審査を受けることもできます。
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事前審査から本申し込みまで、一連の流れをモゲチェック内で完結できる点も便利です。
別物件も探しておき「経験を次に生かす」
1つの物件に固執しすぎると、結局いい買い物ができないこともあります。
「どうしてもこの物件が欲しい」と思い詰めてしまうとまわりが見えなくなり、他に魅力的な物件があっても、それに気づけないということもあります。
もし買えなかったら、その時は「縁がなかったんだ」と考えるようにしてください。
不動産はかなり縁の要素が強く、買えるときは買えますし、買えない時は買えません。そして、間口を広くして情報を収集していくと、実は他にも魅力的な物件があったんだと気づくことが多々あります。
そこで、信頼のできる不動産会社を通してできるだけ多くの物件情報を出してもらうようにしてください。この点、クラシエステートでは、特に新築の建売物件に詳しく、東京都内多摩エリアの物件情報を豊富に提供することができます。
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公式LINEに登録しておくと、思いついたときにお問い合わせいただけます。その中で、物件を幅広く見ていくという方法もおすすめです。
よくある質問「二番手から逆転するためのQ&A」

最後に、二番手から逆転するための基礎知識をQ&A形式でお届けします。
地味ながら「知っておいた方がいい」という不動産売買のしくみを中心に、住宅購入時のチート的な内容も解説していきます。
そもそも「一番手」や「二番手」が存在する理由は?
そもそも、なぜ不動産売買で一番手や二番手があるのでしょうか?
日用品など普通の普段の買い物であれば、お金を払い買ったものを受け取るというのは、その場で同時に行うことができます(同時履行の原則)。
しかし、不動産の売買では様々な制約から「気軽にお金を払って物件を受け取る」という事はできません。
売主は物件を引き渡すだけでなく、登記申請に協力し所有権移転登記を行う必要があります。登記申請から登記完了まで数日から1週間以上のタイムラグがあります。
一方買主は財布からお金を出してすぐに支払うというわけにはいきません。銀行にローンの申し込みに行き、ローンが通ったら、いつ融資を実行するか打ち合わせをした上で、不動産の引き渡し日と決済日を同日に合わせ日程を調整します。
このように複雑な取引になることから「まずは申し込みの先後で交渉の順番を決めましょう」というのが、そもそも一番手や二番手が存在する理由です。
つまり一番手とは最初に交渉する権利がある人で、二番手とは2番目に売主と交渉する権利がある人という意味になります。
そう考えると、二番手からの逆転は不可能ではない仕組みだということがわかります。
二番手でも逆転して購入できる確率は?
すぐ前の章で二番手から逆転することは不可能ではない、という趣旨の話をしました。
しかし二番手が一番手を逆転して物件を購入できる確率は、決して高くはありません。むしろほとんど無理と考えておいた方がいいくらい確率は低いといえるでしょう。
二番手の人が逆転できた確率の統計データなどは存在しませんので、体感での感覚になりますが、おそらく、可能性は数パーセント程度ではないかと思います。
とはいえ、逆転の確率がゼロというわけではありませんから、逆転できた場合に備えてしっかりと用意をしておく方がいいでしょう。
一番手がキャンセルするとしたら理由は?
不動産の仲介業務を行っていると、時折買付証明書を入れた後でキャンセルをしたり、ときには売買契約を締結したのにキャンセルするといった場面に遭遇します。
理由としては以下のようなものが代表例です。
- 住宅ローンの審査に落ちたり、思ったより低い額の融資しか通らなかった
- 親の援助など当てにしていたお金が入らなくなった
- 他によりよい条件の物件が見つかった
- 重要事項説明の時点で初めて聞いた問題点があった
仲介業者としては銀行の申し込みで融資OKが出るまでは、かなりの緊張感を持って見守っています。ローンの審査に落ちるというのは、実際あり得ることだからです。
また少ないのですが「他にもっといい条件の物件が見つかったからキャンセルしたい」という事例も時々あります。
後は家族や知人に反対されて購入を諦めるといった事例もありましたし、購入を申し込んだ夫婦が離婚することになったという事例もありました。離婚を理由にキャンセルというのは筆者の経験上1回だけですが、この時は手付放棄で契約を解除しました。
「買付証明書」を複数の売主に出すのは法律違反?
ごくたまに「なるべく確実に物件を押さえたいから買付証明書を3つぐらい出したいんだけど」と言われることがあります。
これは法律に違反するとまではいえませんが、ルール的にはぜひとも避けていただきたい作戦です。
買付証明書は法律に定められた文書ではなく、どちらかというと紳士協定的なものなので、強制力はありません。
しかし、不動産の売買という複雑な取引を無難に完了させるために不可欠なものなので、私たちは買付証明書を使い購入の申し込みをしています。
複数買付を入れる行為は、そのような買付証明書の存在意義を揺るがしかねません。不動産売買にかかる商道徳の観点でも許されることではないでしょう。
まとめ「二番手でも逆転できる不動産購入戦略」
ここまで見てきたように、不動産の購入においては「申し込みのタイミングによって二番手になってしまった」ということはよくあります。
そんな時、一番手を逆転して購入することは不可能ではありません。ただしその確率は非常に低くせいぜい数パーセント程度だろうと考えられます。
しかし、わずかな可能性であっても、対策を取らないよりも取った方がいいはずです。そこで、この記事では以下の3点を紹介しました。
- 可能なら買付の価格を上げてみる
- 極力現金決済にする。現金が無理でも銀行の事前審査は終えておく
- 現状有姿で購入する。無理でも不動産会社と相談のうえ、譲れる条件は譲る
こういった対策を行うだけでも、逆転の可能性は上がるはずです。
しかし、具体的にはどうやればいいの? と迷ってしまうこともあるでしょう。そんな時、八王子市を中心とする多摩エリアでの不動産購入であれば、クラシエステート株式会社までご相談ください。
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