借地権と地上権

借地権付き空き家の処分方法と対策 - 相続後のお悩み対策

借地権付きの空き家を相続したものの、「処分に困っている」「地主との交渉が不安」という方は多いのではないでしょうか。

実は、借地権付き空き家には地主への売却、第三者への売却、賃貸活用など5つの処分方法があります。場合によっては、解体費用を抑えながら資産価値を活かすことが可能です。

そこで、この記事では借地権付き空き家の具体的な処分方法と、地主との円滑な交渉のポイントを分かりやすく解説しました。相続でお困りの方が、安心して空き家問題を解決できるよう、実践的な情報をお伝えします。

借地権付き空き家とは

借地権とは、他人の土地を借りて建物を建てるための権利です。土地の所有者(地主)と契約を結び、地代を支払って土地を使用します。建物が存在する限り、借地権者には継続的な土地使用の権利が認められています。

この借地権は相続の対象となるため、親から相続した空き家が借地権付きの場合、相続人が新たな借地権者となります。ただし、相続後は地主に相続の事実を報告する義務があり、これを怠ると契約解除などのリスクも考えられます。

借地権付き空き家を処分・活用する5つの方法

借地権付きの空き家を相続したり贈与された場合「どう活用すればいいの?」と迷うこともあります。

しかし、借地権は強力な権利ですから、それなりの価値があるケースも多く、うまく活用すれば資産価値を生かすことも可能です。

ここではまず、借地権付き空き家を処分・活用する5つの方法について見ていきましょう。

1. 地主に買い取ってもらう

最も直接的な方法は、地主に借地権を買い取ってもらうことです。

地主にとっては、借地権がなくなることで土地の完全な所有権を取り戻せるメリットがあります。一方で、買い取り価格は市場価格よりも低くなる傾向があることがデメリットです。

交渉を成功させるポイントは、地主の立場を理解し、双方にとってメリットのある条件を提示することです。地主が土地を将来的に活用する計画がある場合、交渉が成功する可能性が高まります。

2. 底地と同時売却

底地所有者(地主)と共同で売却する方法もあります。

この方法では、底地と借地権が一体化されて売却されるため、買い手にとって大きな魅力があります。その結果、売却価格を最大化することが可能です。

ただし、底地所有者(地主)との調整や売却先との交渉が必要になります。円滑に進めるためには、事前に底地所有者の意向を確認し、借地権に強い不動産会社に相談しておくことをおすすめします。

3. 第三者に売却する

借地権を第三者に売却する方法では、買い手が新たな借地権者として地主と契約を結びます。

この際、地主の承諾が必要となるため、事前に地主との円滑なコミュニケーションを図ることが重要です。また、借地権付き物件を魅力的に見せるために、建物の状態を整えておくことも売却成功の鍵となります。

売却価格を適切に設定し、購入者にとって魅力的な条件を提示することで、スムーズな売却が期待できます。地主の承諾については、以下の記事で解説しています。

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4. 賃貸物件として活用する

立地条件が良い場合、賃貸物件として活用する方法も考えられます。

賃貸として貸し出すことで、相続した資産から継続的に収益を得ることができます。特に駅近や商業施設が近い立地では、空き家の有効活用手段として検討する価値があります。

ただし、賃貸契約を締結する際は、借地契約の更新に関するルールや条件に注意が必要です。借地権の残存期間や更新条件を確認し、長期的な収益計画を立てることも必要になるでしょう。

5. 更地にして返還する

建物を解体して更地として地主に返還する方法もあります。

この方法では、解体費用や手続きがかかりますが、契約が終了し地主との関係を完全に解消できます。木造住宅の場合、解体費用は1坪あたり3万円から5万円が相場となっています。

解体費用を抑えるためには、複数の解体業者から見積もりを取り、自治体の補助金制度の利用も検討しましょう。

土地返却時になるべく建物解体費用を請求されない方法

借地借家法では、旧法借地権の存続期間が満了し、更新されない場合、借地人は原則として建物を収去(解体)して土地を更地にして返還する義務があります(旧借地法第13条1項、現行借地借家法第13条1項も同様の考え方)。

これは地主がその土地を自由に使えるようにとの考え方です。ただし、後述する建物買取請求権を行使する場合は、解体する必要はありません。

解体費用の負担を避ける理由

借地権付き空き家の解体には多額の費用がかかります。木造住宅30坪の場合、解体費用は約100万円から200万円が目安となります。鉄筋コンクリート造の場合は、さらに高額になります。

また、解体作業中の騒音や振動によって近隣とのトラブルが発生するリスクもあります。老朽化した建物の場合、解体作業が困難になり、予想以上の費用がかかる可能性もあります。

そのように負担が大きい解体費用を避けるには、2つの方法が考えられます。

  1. 建物買取請求権を行使する
  2. 借地権付きの建物として第三者に売却する

建物買取請求権を行使する(建物を解体しない)場合

旧法借地権でも借地借家法の借地でも、土地を返還する際に地主にたいして建物買取請求権を行使することが認められています(「借地借家法第13条1項」)。

解体費用を負担する必要もなくなりますが、建物の時価評価をめぐって、地主と意見が食い違う可能性があります。

説得力のある価格査定ができる不動産業者に相談し、仲介に入ってもらうという方法も検討してみてください。

実際に売却する場合の注意点

実際に、解体せずに借地権付き空き家を売却した成功事例は多々あります。

筆者が取り扱った案件でも、相続した借地の空き家を円満に売却した事例があります。地主さんの考え方によりますが、スムーズに承諾してくれて、承諾料についても相場の範囲内で合意してくれるケースも多々あります。

一方で、地主がその土地を使いたいと考えている場合には、交渉が難航するかもしれません。

念のため、交渉が難航した場合に備えて、借地権に強い不動産会社を選んでおくことが重要でしょう。不動産会社であればこういった問題に強い弁護士を知っているので、万が一の場合は弁護士につないでもらうといいでしょう。

地主との交渉を成功させるポイント

売却したり、建物買取請求権を行使する前提として、できれば地主との関係を良好に保っておき、交渉をスムーズに進めたいものです。

その際、地主側の立場に立って物事を見てみると、どのようなポイントに注意すべきかが見えてきます。

なるべく普段から良好な関係を築こう

地主との交渉を成功させるためには、事前準備が欠かせません。

まず、売却の目的や意図を明確にし、地主に誠意を持って説明することが重要です。地主の立場からすると、土地の借り手が変わり、誰かしらない人がそこに住むわけですから、不安があるのは当然です。

そこで早め早めに連絡をしておき、地主と売却についての相談をしておきましょう。また、買ってくれそうな人が現れたときも、地主が安心できるような情報提供を心掛けてください。

買主の人柄や利用計画について詳しく説明し、地主の不安を解消することで、交渉が円滑に進みます。

弁護士は誰でもいいわけではない

最悪は地主との交渉が決裂し、借地非訟手続きなどに移行することも想定しておきましょう。その際、弁護士選びは大きな課題です。

宅建業を営んでいる間、筆者は多くの弁護士さんと関わってきました。そのうえで「弁護士の実力はバラバラ」と考えています。

ひどい人はかなり仕事ができませんが、頼りになる先生は、だいたい常に頼りになります。

特に、不動産取引に強い弁護士さんで、しっかりした先生を見つけておくことは非常に大切です。その点、筆者のような宅建業者であれば、常に弁護士さんとコンタクトを取り「この先生は仕事ができる」という人を知っています。

ぜひ、そういった弁護士さんを紹介してもらうようにしてください。

いい弁護士を探すなら、いい不動産会社を探すことからスタートする、と考えておくといいでしょう。

よくあるトラブルと解決策(Q&A)

最後に、本文中では解説できなかった補足事項や、再度確認しておきたいポイントをQ&A形式でまとめました。

よくあるトラブルの内容とは?

借地権付き空き家を保有する際、地代や承諾料を巡るトラブルが発生することがあります。

地代の値上げ要求に対しては、契約書に基づき、相場や物価の動向を考慮した適正価格かどうかを確認することが大切です。必要に応じて専門家を交えて交渉し、適正な範囲での支払いを心がけましょう。

承諾料についても、法的には地主に一定の権利がありますが、過度な要求には適切に対応する必要があります。専門家の助言を得ながら、適正な範囲で解決することがトラブル回避の鍵となります。

売却時にまず注意しておくべき事とは?

売却時には、地主との交渉をスムーズに進めるための準備が欠かせません。

地主の協力が得られることで、売却が円滑になり、結果的に高値での売却が期待できます。トラブルを避けるために、契約書の内容を事前に確認し、不明な点は専門家に相談することが重要です。

相続した物件の空き家特例とは?

空き家特例とは、相続により取得した空き家が一定の条件を満たす場合、譲渡所得税が控除される特例です。空き家の売却が難しくならないように国が設けた制度で、適用には空き家が旧耐震基準の建物であることなどの条件があります。

空き家を解体する場合、費用の目安は?

空き家の解体費用は、建物の規模や材質、地域によって異なります。一般的に木造30坪の住宅なら約100万円から200万円が目安です。鉄筋コンクリート造の場合はさらに高くなります。

まとめ「借地権付き空き家の処分方法」

借地権付きの空き家を相続した場合、その扱いには、土地所有権物件とは違う知識や配慮が必要です。

借地権付き空き家の処分方法も一般物件とは少し異なり、地主への買い取り依頼、底地所有者と共同売却、第三者への売却、賃貸物件化、更地にして返還するなどの選択肢があります。

それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますが、鍵を握るのは地主との交渉。そのために、日ごろから地主とのコミュニケーションを円滑に保つよう心掛けてください。

売却時にも、地主と密に連絡を取っておいた方がいいでしょう。

また、万が一地代や承諾料に関するトラブルが発生した場合は、地主との交渉を覚悟しておく必要もあります。そのためにも、借地権に強い不動産会社を探しておくことが、借地権付き空き家を処分するための第一歩となります。

クラシエステート株式会社では、八王子市を中心とする多摩エリアの借地物件の処分をお手伝いしています。

借地権付き空き家を有効活用するには、状況に応じた最適な方法を見極めることが大切です。専門家の力を借りて、地主や購入者との円滑な交渉を進めることで、資産価値を最大化するようにしましょう。

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